或曇つた冬の日暮である。から始まる芥川龍之介氏の短編小説「蜜柑」を読んだのは、ストーブでは到底寒さを凌げない教室で行われた国語の時間。なんとも切ない気持ちになり、言葉舞い落ちる教科書から、汽車の揺れや乗客の質感まで、今のいままで後生大事に、頭の隅に所蔵していたようで、その鮮やかなる情景が應典院に届けられたひと箱の蜜柑から、あふれ出た。
主幹のご実家から届けられた静岡みかんは、應典院と創教出版社のみなさまの胃袋へと収まりました。風邪気味スタッフが多いので、まるごとビタミンの到着に、一同カンゲキしております。
私はこの時始めて、云ひやうのない疲労と倦怠とを、さうして又不可解な、下等な、退屈な人生を僅に忘れる事が出来たのである。
(シヲ)
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